Little AngelPretty devil 〜ルイヒル年の差パラレル

    “天使か悪魔か…vv”


昨年から言われ始めた“草食系男子”というのは、
その直前までの流行語だった、弁当男子やスィーツ男子を統合したもので。
その社会進出がいよいよのこと男性にも負けじなレベルにまでなった女性たちが、
焼肉やバーでの“お一人様”を余裕で堪能出来るよになったのと入れ替わり。
女子供の食べるものと言われ続けていた甘味を、
でもサ男子が食べてもいいじゃないと、
肯定とか公言とか、出来る世情になって来たってワケらしく。

 “逆チョコってのは、それとはまた別の流行なんだろな。”

そうですね、
そっちは“男性が女性へ贈ったっていいじゃない”という形式のことで、
別段、草食系じゃあなくたってチョコを見繕って構わない。
といいますか、そもそもの聖バレンタインデーは、
愛する人へ花束やちょっとしたものを贈るのだとか。
それへかこつけて、求婚する…というのもまた、
本場の欧米ではポピュラーな把握だそうですし、
男性からチョコを贈るのは、実は全然“逆”じゃあない。

 “女への贈り物なんだからってこともあっし、
  ワインやブランディのあてにってカッコで。
  平生からだってチョコに詳しい男ってのは結構いるらしいしな。”

欧米じゃあブティック感覚で、
チョコのイメージをシックに生かした、
スタイリッシュ&クールな内装の、
大人とかセレブとかいう雰囲気のぷんぷんする、
高級チョコレートの専門店なんてのが、
通年で営業しているもんらしい…と。
知識としては知ってるものの、

 “………う〜んと。”

一応、前日に掻き集めた情報によると、
今年の流行は随分とバラエティに富んでるらしい。
何たって当日が日曜日なので、
学生さんの場合は本命だけにと余裕で絞れる。
OLの皆様は…職場のカラーにもよるのだそうで、
中には自分の亭主がどれほど人気があるのかを知りたいらしい奥さんもいて、
勿論のこと義理でいいから、何人に幾つ貰えるかを期待されてるご亭主もいる。
ご本人からして、自分への好感度へのバロメータにしておいでの場合もある。
なので、日曜ですから…が理由にならない、
ちゃんと配った方がいい職場も結構あるらしく。
はたまた、冒頭に述べた“草食系”は、
自分でリサーチしていたり、
ともすりゃ自分で“マイチョコ”を買っていたりするそうで。

 “まさかルイとばったり鉢合わせ…なんてことには なんねぇだろな。”

何しろ、
スィーツ何とかや草食系何とかが取り沙汰される以前から、
特に頓着もしないでモンブランやプリンを食していた、
紛うことなき“ブルジョア系”男子の君だから。
自分の部屋の書架に、
シックないぶし銀の蓋付きケースをおいていて、
そこにはトリュフタイプのチョコが時々入っていたりもしたの、
こんな場ながら思い出した妖一くんとしては、

 “値段がどうのブランドがどうのには、煩くないんだろうけどよ。”

選りにも選って、自分は全く食べない“甘味”なだけに、
それをどうやって選定したものかという、
思いも拠らない難関を前にし、
桜色した口許を、むむうとひん曲げての思案中。

 “…にしても、暑っついなぁ。”

くどいようだが今年は当日が日曜のはずなのに、
出口調査、もとえ、街角アンケなどによれば、
今年は義理チョコは配りませんと言ったOLがどんと増えてるはずなのに。
デパートの1階フロアのほとんどを埋める特設会場には、
暖房なんて要らないじゃなかろうかというほどの熱気が立ち込めており。
詰め掛けた女性らのまとう化粧品の匂いも入り混じっての、
慣れのない者へは結構な苦行場と化している。

  いよいよ明日に控えた、聖バレンタインデー

チョコなんて要らないだろほど、甘甘で熱っつあつな恋愛進行中のカノ女も、
勇気を出して告白だと意気揚々でいる女子高生も、
サークルのイケメンに是非ともアタシを選んでもらわなきゃあと、
女の意地から物色中らしき女子大生のお姉様も。
マイチョコや友チョコに、
美味しそうなのや掘り出し物をと捜しに来たにぎやかな一団を除いて、
いろんな素振りに押し隠しつつも、
目だけは真剣な“やる気満々”の女性の群れだらけな会場に於いては、
それがどんな二枚目の連れだろうと、
ちょっと可愛いだけな存在なんて、今は二の次扱いになる正直さ。

 “ああいうのがサ、
  別な機会にゃ 子犬や仔猫へ“か〜わい〜いvv”とか言うのが、
  鼻持ちならんってゆんだよな。”

関係ないだろおチビさんは退いてと言わんばかり、
やたらマスカラにリキ入れた派手めな女子大生に、
お尻でぐいと割り込まれ、ショーケース前から押しのけられて。
この野郎…と目が据わりかかった小悪魔様だったが、
そんな自分を見ていたお店のお姉さんにも気がついたので、

 「…えへへvv」

退いてってされちゃったと、困ったように微笑って見せれば。
キョロッと周囲を見回してから、いきなりしゃがみ込んだお姉さんが、
ショーケースの横合いから、ほいと伸ばした腕で渡してくれたのが、

 「………あvv」

試食用にしては量も多かろ、
その店の今年の売り出し、生チョコトリュフのSSパックだったりし。
いいの?と上目遣いに見返せば、
いいのいいの、あんな厚化粧女に買われるくらいならと、
何度も激しく頷いて、ぎゅううと押しつけて下さったので。

 「ありがとですvv」

金茶のうるるんな瞳をぱちぱちっと瞬かせ、
ばら色の唇には含羞みを淡くなすった特上の微笑み。
ルイにも滅多に見せないぞ、飛び切り奮発スマイルでお礼を言えば、

 「……い、いいのよ。また来年ねvv////////」

一瞥だけで向こう様までが真っ赤っ赤になったほどの、
美幼児の醸す、無垢さの威力の恐ろしさ。

 “…無垢な笑みかどうかはともかく、でしょうが。”

おおお、いきなりの横槍が入りました。
そういう視線には、妖一坊ちゃんも気がついたらしく、
とはいえ…警戒するより注視するより先に、

 「ヒル魔くんっ!」

その誰かさんの足元から、ぱたたっと駆けて来たのが、
それこそ“無垢さ
(ピュア)”の塊の純正タイプ、
小早川さんチの瀬那くんだったりし。

 「ヒル魔くんもチョコ買いに来たの?
  セナも進さんとさく…ばさんにって。」

一応は色つきのアイウェアで誤魔化してる桜庭だってのに、
連れがそのまま名指ししてどうしますかと。
そちらからも歩み寄った妖一くんが、
素早く手のひらかざしてお口を塞いだ、
無邪気で小さなクラスメートさん。
つややかな上質紙の紙バッグを既に幾つか提げており、

 「それ、もう買ったんか?」

訊けば、ん〜んとかぶりを振った小さなセナくん。

 「何かね、
  お店のおねいさんが“これ美味しいのよ”ってあちこちでくれるから。」

さすがは天然印で、
何の作為もないままで、
到底“試食用”とは思えぬレベルのおすそ分けを、
そちらでもいただいていた坊っちゃんらしく。

 「でも、進さんにはカカオが濃いのがいいよって。」

 ガオ?ギャオ?ってゆうのが入ってて、ストエスに効くんだって。
 それも言うなら、ギャバだ ギャバ。それに、

 「ストレス対策だってんなら、
  それこそこいつとか監督へ買ってやった方がよくねぇか?」
 「これこれ、ヨウちゃん。人を立てた親指で差さない。」

どっちもどっちで極端から極端へと、困ったお子様が二人に増えて。
進には内緒でデパートでお買い物がしたい、
そんなセナくんのエスコートとを、
微妙に当事者な進から託された辺りから。
大変な1日になりそうだよなという
“予測”はあったらしかった桜庭さんが、

 “…もしかして、ここからはヨウちゃんも加わってしまうのだろか。”

うわあ〜〜〜、
なんでまた、こんな凄まじいお守り役しなきゃなんないボクなんだろか、と。
せっかくの風貌引きつらせてしまったのも無理はなく。






 「あのあの、おねいさん。
  二段目の右端の、
  真っ赤なハートのトリュフが輪になったのの、
  えむってゆうの、1つ下さい。」

 「それと、あのね?
  そっちのチョコのトンカチついてるの。
  …うん、それ。セナに1個下さいなvv」


やっとのこと、本命様へのが決まったのが小一時間ほどかかった後のこと。
大変でしたねご苦労様と、
喫茶コーナーに落ち着いてから、
今度は桜庭さんにこそ、店内全部の視線が集まり、
やっぱり落ち着けなかったお出掛けだったりしたそうな。


  「面が割れてる有名人ってのは大変だな。」
  「…言っとくけれど、前半が大変だったのは、
   君らが店員のお姉さんたちにちやほやされてたからだぞ?」
  「? そぉだったか?」

 立ち止まるブースごとに、ちょっとした進物箱1個分はあろう、お味見のチョコ貰いまくりだったろうが。

 「おお、あれな。」
 「良かったねぇ、明日の練習のきゅーけー用のお菓子買わないで済むよね?」
 「ウチも義理チョコの分をわざわざ買わんで済みそうだ。」

 だ・か・ら〜〜〜と、歯軋りしかかった桜庭さんだったようだけど。結局は“はぁあ”と溜息つくだけで諦めた。言ったって始まらないだろし、それに、

  “何というか、嬉しそうなお顔するんだものな。”

 セナくんの側の笑顔は、日頃からも見ている素直で可憐なそれだけど。小悪魔、もとえ、妖一くんのお顔に浮かべてる笑みは、本人も気づいてはいなかろう、それはそれは愛らしくも含羞みの色合い濃い代物だったりしたもんだから。滅多にないもの拝ませて貰ったのだから、ここはチャラにして差し上げましょうと、苦笑のやり場にこそ困っておいで。


  「…何だよ、桜庭。にやにやしやがって。」
  「べっつにぃ〜〜〜。
   それよかヨウちゃん、お父さんには用意してるのかい?」
  「?? なんで?」
  「あ、知らないぞ?
   去年もあげなかったんだろ、結構拗ねてたらしいよ?」

   「……手ぇかかる親父だ、まったくよ。」



   お後がよろしいようで。
(苦笑)



     Happy Valentine's Day!


   〜Fine〜  10.02.13.


  *今年のスーパーボウル、セイントが初優勝しましたねぇ。
   前半、いやさ3th半ばまでコルツが圧してたのに、
   まあまあ勢いってのは物凄い。(チョー失礼)
   …なんて言ってますが、
   ゲームの内容よりも、ハーフタイムのショーに、
   全部持ってかれた今年のスーパーボウルでした、ええ。
   まさかあんなタイミングで、
   CSIの主題歌メドレー聞けるとは思わなかったものvv

  *……というよな 時事噺はともかく。
   やっぱ外せないイベントなので、
   今年は“買い物に来た子ヒル魔くんの図”を一席。
   食べるものを買うときゃ、
   かわい子ぶりこに限ると豪語しているヒル魔くんですが、
   この土俵でだけは、なかなか微妙だったらしいです。
   (売り子さんはともかく、買い手側にライバルがいっぱいで・笑)

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